僕がその異変に気がついたのは秋の深まるある日の午後。ママのこの言葉からだった。

 

『きゃはは…。た、たのむ…ちび…。ぐりぐりと動くな…。』

 

はぁ?“ぐりぐり”と“動くな”?僕…。今、起きたばかりなんだけれど。しかも“ぐりぐり”と動いたことがないんだが…。

 

そう。このところ、どうにもどうにも様子がおかしいのだ。身動きができない。…窮屈そのものなのだ。

 

『しかし…。俺も妊婦を見たけれどお前の腹、随分と大きいな。』

『…どこで…見た?』

 

…ママ…。突っ込むのはそこじゃないんだけれどなぁ〜。

 

そう…。僕はママのお腹の中にいるから外から見ることはできないけれど、ママのお腹は随分と大きくなっているようだ。にもかかわらず、どうして僕はこんな窮屈な思いをしなければならないんだろう?

 

「それは、こっちのセリフよ!」

 

僕の胸につつき刺さるような言葉に僕は肝を潰した。

 

…おかしい…。

 

僕に投げかけたその言葉はどう考えてもママのお腹に話しかけているのではなく、僕自身に話しかけている…。しかも“外”からの声ではなく、耳元でしかも怒鳴られている…。

僕は…恐る恐る…振り返った…。すると…。

「ぎ、ぎぎゃぁぁぁ〜〜!」

僕が…二人いるっ!

「はぁ…」

そう“僕”がため息をつくと“僕”は僕に言い放った。

「あのね…。私たち、双子なのよ」

はい?

 

僕が呆然としていると“僕”は続けた。

「あなたと私は双子なの。今までおとなしくしていたんだけれど、あなたが踊っているのを見ていたら私も動きたくなったの。…それにしても…」

「な、なんでしょう?」

「今まで私の存在を知らなかったの?」

“私”と言っている“僕”は僕をにらみつけた。

「…うん…」

「はぁ…」

「だって双子ってめずらしくない?」

「とはいえ、そういう可能性もあるわけじゃないっ?」

「おっしゃるとおりです…」

「はぁ」

“私”は大きくため息をつくとするどいまなざしで僕を見つめた。

「お気楽と言うか、シンプルというか…。ま、いいわ。生まれてから私がきっちりと訓練してあげるから!」

「はい…」

「あなたは一応、男の子だから、ジャルジェ家の跡継ぎでしょ?」

「そういうことになるかな…?」

「そうなの!あなたをみっちりしごいてあげるわ!」

「・・・・・」

彼女の有無を言わさぬ意思の強い眼光に僕はたじろぎ…。

「…はい…」

「よし。あぁ、ほっとしたら眠くなっちゃった。じゃ、私、休むから静かにしていてちょうだいね」

 

はぁ…。なんだ?生まれる前から僕の人生は…決まってしまうのか…??

あぁ…。めまいがぁあ!!

(生まれる前から)儚かった僕の人生…。













かりめろさまから頂いた天使シリーズです♪
勝手に双子にしてしまいましたが、見事に話を合わせてくださって、感激しきりです。
このけなげで、父親似のミカエルくんのファンがまたまた増えたことでしょう(^_^)v。
かりめろさま、ありがとうございました。  さわらび



 

天使のぼやき

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