雲ひとつ無い晴天
そよ風は、彼女の上の葉陰を揺らした
樹の幹にもたれかかりオスカルは腕組みをして考え込んでいた

当たり前のことだけれど、アンドレの誕生日は毎年、毎年、やってくる
アンドレおじさんは何をあげたら喜ぶだろうか?

オスカルは空を仰いだ

葉に木漏れ日が反射して、ぴかぴかと光った
オスカルは自分の指輪を見た
昨年の誕生日に彼から贈られた結婚指輪

「そういえば、指輪の返しをしていなかったな」
本当は揃いの指輪をはめたいけれど、表向きには叶わない
身分制度とやらが疎ましく思える




彼女が選んだのはダイヤのピン

これを彼の襟元に刺してあげたら、どんな顔をするのだろうか
想像するだけで頬がゆるむ

自分でも、こんな気持ちになる日が来るなんて予想できなかった
まったく何があるかわからないから人生は面白い

毎年、姿を変える彼への誕生日プレゼント。

子どもの頃は、木彫りの兵隊、小さなナイフ
大人になってからは、シルクのシャツや装飾品

いつもプレゼントの中に、彼への感謝の気持ちを込めた
友人として、上司として・・・・・

でも今年はちょっと違うな
カードを書きかけたオスカルの手は止まったまんま

この気持ちはなんだろう
アンドレへと向かうキモチは留まる事を知らない

そのうちに自分が爆発してしまうのではないかと思うほどに・・・




彼女は、ペンをほおりだした。
「ええい、ままよ!」

いつものカードも蒼いリボンも今年は無しだ!
オスカルは彼の部屋へと向かった。

しゃれた小道具はないけれど、ダイヤのピンを渡して言葉のリボンを添えよう

ずっとずっと、好きだよ
きっときっと、この気持ちは変わらないから

「アンドレ、わたしだ。入るぞ」

後ろ手にプレゼントを隠しながら、オスカルは彼の傍に歩み寄った。
「お誕生日おめでとう。アンドレ」


Fin

郁さま作

郁さまからのメッセージ


変わらないもの

みやさんの作品でアンドレの誕生日の贈り物が変化していくのに対して、時間の
流れを感じました。
変わっていく贈り物たち。
でもそれをアンドレに渡すときのオスカルの気持ちっていつも変わらなかった
んじゃないかなと思います。

ささやかながら、さわらびさんへのHP開設祝いです。
今後のご活躍に期待しています。         

郁さまが、みやさまに続いてオスカルさまバージョンを贈って下さいました。
原作にはない二人の幸せな時間。願望ものオンリーの拙サイトのオープン
のお祝いに、こんなぴったりのものを頂戴して、本当に嬉しいです。
郁さま、ありがとうございました。
                              さわらび