「ねぇ、アンドレは何色が好き?」
はじめて聞かれたのは8歳の冬。
「…あお。
あおが好きだよ、オスカル。
夏の空みたいな深いあおが好き」
初めてもらったのは、魔法使いと勇敢な騎士の童話
それが9歳の夏。
木彫りの兵隊、小さなナイフ、乗馬用の手袋、小さな地球儀
士官学校に通いだしたおまえが、一人で先に大人になっていくようでほんのすこし寂
しい。
伸ばしはじめた髪を、笑いながら引っ張ったおまえ。
ベルベットのリボン、ガラスのボタン、イニシャル入りのグラス
毎年毎年『大好きなアンドレ』で始まるカードと一緒に手渡されるプレゼントには、
蒼いリボンが結ばれている。
純白の軍服に身を包み、宮廷という未知の世界に足を踏み入れたおまえ。
「毎朝、見るたびでかくなるな」
俺を見上げてあきれたように言う。
ある晩自室に戻ると、
すっかり窮屈になっていた俺の寝台は特大の新品に変わっていた。
背もたれに結ばれた蒼いリボン。
誕生年のワイン(半分以上はおまえが飲んだよな)、サテンのリボン、
七宝のボタン、新しい鞍
緋色の軍服が黄金の髪の色を鮮やかに飾る。
銀細工の十字架、ヴェネッイアンレースのクラバット、極上のブランディー(だから
これは誰のお祝いなんだ?やっぱり半分はおまえが飲んだろう)
本当に欲しい”蒼”は、
切ない想いに揺れながら、手の届かぬところで輝いている。
だから、
俺の足元に迫る影は こんなにも暗い。
シルクのシャツ、モスグリーンのジレ、黒曜石のブローチ、懐中時計
30の大台に乗った年。
ニヤニヤ笑うおまえに、
「節目、だからな」
言葉と一緒に渡された、蒼いリボンの掛けられた包みに添えられたカード。
『大好きなアンドレおじさんへ』
おまえ、自分が俺と一つしか違わないことを都合良く忘れてるだろ?
次のおまえへのプレゼントに『大好きなオスカルお○さんへ』って書こうかな。
殴られるな、きっと。
しでかした俺の下劣な愚行を、静かな許しで包んでくれたおまえ。
美しい花園を飛び出して、荒野へ。
約束された栄達も、高貴な方の寵愛も、おまえの情熱が焼き尽くす。
側に居ることを許されるなら、それだけでいいと思っていた。
なのに。
「何を考えている?」
俺の腕の中で、俺を見上げる蒼い瞳。
抱きしめる腕に力を込める。
「今までで一番幸せな誕生日だな、ってこと」
顔中に降ってくるくちづけに苦笑しながら、おまえは俺の襟元に小さなダイヤのピン
を刺してくれる。
「蒼いリボンはないけど」
そう言いながら。
「蒼いリボンならここに」
俺はおまえの両目蓋にくちづける。
欲しかった”蒼”はここに、俺の腕の中に、今。
「じゃあ、こうして結んで、縛ってしまおう。何処へも行けないように」
くすくす笑いながら、おまえが俺の首に腕を回す。
ああ、
そうだよ、オスカル。
俺の幸せにはいつでも 蒼いリボンが掛けられている。
みやさまからアンドレのお誕生日祝いと開設祝いに頂きました。
ありがとうございます。
毎年の贈り物にオスカルさまとアンドレの関係がしっかり表れて、
アンドレにはうれしくて、けれど切ない…。
蒼いリボンが本当に望むものとなったアンドレの喜びは、このたび
みやさまから、このお話を頂いたときの私の気持ちと同じくらいでしょうか。
心から感謝申し上げます。
さわらび
みやさま作
みやさまからのメッセージ
原作では、アンドレのお誕生日に二人がアツアツだった時はありません。
でもそこはお祝いですから、その辺の事情は銀河の彼方へけっぽり出しておいて、
お二人には甘々ベタベタしていただきましょう♪
愛しいアンドレ、お誕生日おめでとう!
そしてさわらびさま、サイト開設、おめでとうございます!!