ルーブル展の感想文




                               2008年5月2日金曜日

絶対に一人で行って堪能するんだ、と決意していたのに、なぜか二人連れになってしまい、初っぱなから嫌な予感が…。
神戸市立博物館は、何度も行っており、前回は2月の浮世絵展でした。
そういうものに興味のある人(夫です(^^;))と一緒に行けばどうなるか、おおよそ推測はできたのですが、身分差あってこそ燃え上がる愛のように、妨害あってこそ情熱をかき立てられるのだ、と自身に言い聞かせ、高鳴る胸を押さえて入場しました。

展示第一番は、あのミラボー伯爵の父上の肖像画。
原作で団子鼻に描かれていた子息とは似ても似つかぬすらっとした気品ある貴族で、背景も蔵書を陳列した書棚という高尚さ。「酒と女で放蕩三昧」という原作の伯爵がどうしてこんな父上から生まれたのかしら?と不思議でなりませんでしたが、隣でしきりに「大きいなあ!」とサイズだけに感嘆する連れに、「そこに感動するか」とつっこみたいのをぐっとこらえました。が、私も絵画としてどうか、というよりは「あのミラボー伯爵の父上」としてのみ感動しておりましたので、大差ないのかもしれません(^^;)。

続いてロカイユ形式の展示。私はオスカルさまの7月13日の決意の独白、「さらば、愛を込めて仕えたロココの女王」がすり込まれているものですから、「ロカイユ?何それ?」と思いましたが、フランスではこう呼ぶのだそうです。言語とは難しいものですねえ。左右非対称の曲線美などが特徴とかで、模様のデザイン画が展示されていて、そういえば原作でもこういう模様が使われていたわあ、と納得。しかし連れは「何これ?」の一言。「見ればわかる、読めばわかる。その努力を怠るな!」と一括したいのをまたまた我慢。忍耐力をためされる見学となってきました。

続いて陶磁器のコレクションです。こちらは中国や日本から輸入してヨーロッパで金の細工を施した宮廷文化にふさわしい豪華なものばかり。アントワネットの最初のコレクションはマリア・テレジアからの遺品との説明に、文化の伝播と継承に思いをいたしておりますと、
「青磁っていうのはシンプルやからええんや。なんでこんなゴタゴタと飾り付けるんかなあ。ナンセンスや。」
とまたもや連れの一言。
「確かにそういう面もありますよ。ありますけど、あの豪華な宮廷に飾るのならば、それなりに手を加えようという気持ちが起きるのも仕方ないじゃないの。他のものとのバランスってものがあるでしょう。青磁の壺は日本の床の間ではそのままがいいけど、なんてったってフランス宮廷、豪華絢爛にしなくっちゃあ…。」
もう少しソフトな言い方でしたが、ちょっと反論してみました。
すると
「だから革命が起きるんや。まさに贅沢三昧、無駄の象徴やないか。」
と切り替えされ絶句。
確かにそう言われるとそうかも…と思う自分が寂しい。アントワネットにもう少し見識があれば、あの悲惨な最期は防げたはず、と実は私もずっと思い続けているのです。
 そう思うと、豪華な品々が急に物悲しく思えてきました。ベルサイユ宮殿は当時市民に解放されていたといいますから、政治がうまくいっている間は強大なフランス国家の象徴として国民から誇らしく見つめられていたことでしょう。しかし、同じものでも、見る側の生活が困窮しはじめれば怨嗟の的にしかなりません。ルイ15世やポンパドゥール夫人の時代と、ルイ16世やマリー・アントワネットの時代には深い深い溝があったのです。
 日本の権力者が傍目にはそれとわからない小さな茶碗や刀剣に財を費やしたことは、ある意味賢明だったのかもしれません。ベルサイユ宮殿は隠しようもないほど桁外れに豪華であり、したがって略奪の対象となって文化財は散逸してしまいました。
「現在展示されているベルサイユ宮殿の調度品はな、昔からあったもの、略奪されたけど買い戻したもの、そしてどうにもならんから現代の技術で作らせた複製品の三種類にわけられるんや。だから、18世紀のもんや、と喜んで見取ったらだまされるんや。まあさすがに宮殿という器だけはそのまま残ってるけどな。それも今は修理中やったわ。」
昨夏、現地に行ってきた連れのしたり顔がますます悲しい。これら豪華なものに囲まれて笑いさざめく王妃や貴族を、衛兵隊に移り庶民の暮らしに目を向け始めたオスカルさまはどんな思いで見つめていたことでしょう。もっと華やかな気分に浸るはずだったのに、少しずつ胸が苦しくなっていきました。
 そして、展示の中程で狩猟服姿の王妃の肖像。あまりにモデルに忠実であったためにご機嫌をそこねたらしい、との解説に、虚栄を張る貴族社会を垣間見てさらに脱力。でもでも、この服は、すてきでした。女性の乗馬服っていうものがあったわけで、男装とまではいかないけれど、なかなか勇ましい感じです。オスカルさまのお姉様たちもこういう衣装を召すときがあったことでしょう。そしてその姿はさすが姉妹だけあって、馬上指揮を取る妹君にそっくりだったかも…などと妄想がようやくふくらみ始めました。疲れてきた連れも、もう何も言いません。これもよかった(^_^)。 
 続いて後半の目玉は、王妃の旅行鞄です。かのヴァレンヌ逃亡のときに前もってこれだけベルギーの姉妹のもとに送っていたそうで、おかげで現代に残った物です。普段はパリのテュイルリー宮に置いてあったとか。これも原作ファンには見逃せないキーワードに包まれていますよね。凝った細工が施され、こんなものまで、という品々が見事に収納できる逸品です。オスカルさまがお持ちだったなら、ノルマンディー行きの船に間違いなくつみこんだでありましょう。でも、残念ながらこれは王妃ならではのもののようです。
 これ以外にも様々なものを見学して、最後にキッズのガイドと図録を購入いたしました。平日にも関わらず場内は大勢の人で賑わい、グッズ売り場も大混雑でした。もしかしてこの中にご同類がいるかも、と思いましたが、隣の連れに怪しまれてはなりませんので、「さわらび」の連呼は涙をのんであきらめました。よってどなたさまにも肩を叩いていただけませんでした(T_T)。当日、会場に行かれていた方がいらっしゃいましたら、訳のわからぬ解説を聞かされてはプーッと膨れていた中年女性が私でございます。華やかだけれど切ない、これが私の感想でした。



    

※おことわり
   ルポにつきましてはすでにオンディーヌさまの詳細なものがございますので、こちらではあくまで私の個人的感想を記しました。
   ご了承の上お読み下さいませ。オンディーヌさまのルポはこちらからどうぞ。